武庫川鉄橋の川上側

宝塚方面行きの阪急電車の中、時江に因縁をつけたおばさん軍団。時江が手ごわいと見るや、時江の孫の亜美ちゃんを標的にするという卑怯な手を使いますが、ユキと征志の加勢によって敗れ去り、宝塚南口駅で電車を降りていきました。

しかし、勝利の喜びも束の間、おばさんたちの香水の香りでユキは気分が悪くなってしまい、ユキと征志は時江に別れを告げて、隣の車両へ移動します。座るかと尋ねる征志に、「いいよ、あと一駅だし。一緒に立ってる」と言うユキ。電車は、宝塚南口駅を出て、武庫川の鉄橋にさしかかるところです。

この区間における、二人の電車のなかでの立ち位置は決まっています。「ドアはどこでもいい、鉄橋の川上側」です。理由は、鉄橋の川上側の中洲に石積みで作られた「生」の文字、すなわち二人の出会いのきっかけとなったオブジェがあったからです。

二人の出会いから半年、その間に「生」のオブジェは武庫川の流れにさらわれて自然消滅してしまいましたが、その後も二人は電車に乗って鉄橋を渡るたび、いとおしそうに中州を見つめていたのでしょうね。

さて、ここで少し顔をあげて、その中州のさらに上流を見ますと、小さなダムがあります。宝塚観光ダムです。ちょうど宝塚大劇場の裏手にあたる部分ですが、ここは川の流れがせきとめられて、湖のようになっています。中央には、「ビッグ・フェニックス」という大噴水があります。

かつては、ボートが浮かべられたこともあったそうですが、残念ながら、このダム自体を観光地化しようとする市の試みは頓挫した模様。しかし、8月の宝塚観光花火大会の舞台となっていたり、大劇場側沿岸の遊歩道が格好のお散歩コースとなっていたり、市民にとっては大切な憩いの場所です。

観光ダムのさらに上流を見ますと、宝塚駅前と対岸を結ぶ宝来橋が見えます。電車の中からはよく見えませんが、この宝来橋付近を堺に、川の表情がガラリと変わります。流れは浅瀬の急流になり、大きな石がゴロゴロしていて、「渓谷」という趣き。実は、昔の宝塚は山間の温泉地だったと言われてもピンと来ない方が多いと思いますが、その話が納得できるような風景です。